S1学年団教員一同を代表してご挨拶申し上げます。

 中高一貫4期生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。

 まず、この晴れの日を迎えた皆さんに、心からお祝いを申し上げます。そして、ここまで皆さんを支え、励まし、成長を見守ってこられた保護者の皆さまにも、深く感謝を申し上げます。お子様たちが今日の日を迎えられたのは、ご家庭での温かい支えがあったからこそです。本当におめでとうございます。

 さて、毎年この時期になると思い起こす漢詩の一節があります。

「年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず」

 毎年花は同じように咲くけれど、世の中は移り変わっていくという意味です。月日の移ろいの早さに対する感慨が込められた詩だと思います。皆さんも今、入学以来の様々な出来事が頭に思い浮かんでいると思います。皆さん一人ひとりの顔を見て、私も、私の場合はJ2学年からの関わりだけれども、皆さんと一緒に経験した各種研修旅行、合唱コンクールなどの諸行事、その他日々の学校での生活が思い起こされます。そしてその日々の積み上げを経るごとに、皆さんの成長を一歩一歩感じとることができました。若い人の成長スピードの速さは本当に目を見張るものがあります。まさしく「後世畏るべし」です。

 そんな皆さんには蛇足かもしれないけれど、中学卒業、高校進学にあたって、皆さんのこれからに私から要望事項を三点述べさせていただきたいと思います。

 一つ目は「仁の心を持て」です。「仁」とは儒教における最重要思想の一つで、「思いやりの心」の意味です。AIの発展がいわれている昨今、人が人たるゆえんの本質の一つが、私はこの「仁の心」だと思います。皆さんも今後の日々の生活において、特に自分の心に余裕がなくなりそうになる時ほど、他者に対するこの「仁の心」を忘れずにいてほしいと思います。

 二つ目は「体力」です。皆さんも「働き方改革」などの言葉を耳にしたことがあるかもしれません。私の若い頃に比べると、格段に根性論が遠い世の中になったと思います。ただあえて言わせてもらうと、今後の皆さんの人生、必ずここぞという勝負所に遭遇するはずです。そこではどうしても「月月火水木金金」が必要になるかと思います。そして皆さんの多くに、人生二度目の勝負所がほどなく訪れるはずです。乗り切るため、是非とも今以上の「体力」をつけておいてほしいと思います。

 最後の三つ目ですが「良い後悔を重ねる」です。私自身の人生を振り返ると、年相応に挫折と後悔の繰り返しだったと思います。ただ不思議と自分のこれまでの人生、そして今に対する不満はそれほどない。なぜかと振り返ると、その都度その都度の人生のレールを自分で引いたという自覚があるからだと思っています。確かに私も両親はじめ、身近な人の助言を求めたことは多々あります。それでも最後は「自分で決めた」という自負があります。だからこそ挫折も後悔も自分の糧とすることができたのだと思います。第三者から見れば成功と思えることも、自分の意思で決めなかったことに対して、あの時こうすれば良かったと後悔するのが人の常です。「なりたい自分になる」ために、まずは自分で決心することを恐れないでください。「自分の人生を他人の手に委ねない」、これが「良い後悔を重ねる」肝だと思います。

 最後になりますが、4期生の皆さんのこれからのさらなる奮起と飛躍に期待して、もしかしたらこの場にふさわしくなく、まだ皆さんには早いかもしれないけれど、あえて私の座右の銘を皆さんに送り、S1学年を代表しての挨拶と代えさせていただきます。

「傷を負うなら向こう傷。死ぬときは、泥の中でも前のめり。」

2025年3月15日 学年部長