3年生の皆さん、卒業おめでとうございます。高校の入学式は紙に書かれたものを読み上げます。それは嫌ではありませんが、紙に書かないで話をする中学の卒業式は僕は大好きです。その方が気持ちが伝わるからです。
入学式の時に、夙川中学校に入ってきて、どこの大学に行くということを考えずに、とりあえずいい大学に行きたいと考えていたと思います。高校の入学式の時に、私は皆さんにどこの大学に行こうという具体的なことを思うより、違うことを考えてほしいとお願いをしたい。それは、どこの大学に行くということよりも、何の仕事に自分が就くのかということをイメージしてほしい。卒業式の日までにそれを決めてくれというのではなく、高校のどこかで自分は何になりたいかということを決めてほしいと思うわけです。
少しプライベートな話をします。今から50年前ですが、高校1年生の時に新聞を読んでいて、ソニーという会社の記事が出ていました。今から50年前でもとても立派な会社でした。その新聞の記事を読んで、いつかはこの会社に入って、この会社の研究員になって、ソニーの研究所で研究したいと思いました。ソニーには入らなかったけど、ソニーを作った偉い人たちと知り合いになって、ソニーの創業者の息子とも友達になって、ソニーに入った気になりました。高校2年生の時に、好きになった女子が阪大の医学部長の娘で、「私と結婚したかったら、阪大以上の医学部に行かないとダメよ」と言われました。僕はその時に、ソニーの研究所に行く夢は瞬間的に吹っ飛んで、阪大医学部か京大医学部か東大医学部かと考えて、その日の夜は顔が暗くなりました。高校3年生の時には、京大工学部の教授の娘を好きになりました。その人は、京大の教授にならないとダメとは言わなかった。好きなことをすればいいんじゃないの、と言いました。
何が理由で、「なりたい自分」が変わるかは分からない。だけど、みんなにお願いしたいことは、高校時代にアンテナを張り巡らせて色々な人との出会いを重ねて、自分の未来を決めてほしい。それは、何々大学に行くということでは決してなくて、自分がどういう仕事で、生まれてきたこの世の中で役に立つのかということを決めてほしい。
21世紀は男性の時代でも女性の時代でもありません。21世紀は個性の時代です。一人ひとりが持っている個性を伸ばして、「なりたい自分になる」ことが君たちに与えられた一番大きな高校時代のテーマだと思います。君たちの素晴らしい高校時代を一緒に作っていく手伝いを我々にさせてください。健闘を祈っています。
2022年3月18日 学校法人須磨学園 学園長 西和彦