
本日、ここに卒業される皆さん、須磨学園夙川高等学校卒業おめでとうございます。教職員一同、皆さんのご卒業を心より祝福したいと思います。保護者の皆様、ご子息・ご息女のご卒業、心よりお祝い申し上げます。本日を迎えるまでのご苦労に敬意を表し、本校教育に対する深いご理解と多大なるご支援・ご協力に感謝申し上げます。
さて、卒業生の皆さん、皆さんは入学以来本校のスローガン「Learning for tomorrow」のもと、たくさんのことを学び、経験してきました。うまくいったこともあれば、思うようにいかなかったこともあったでしょう。時には壁にぶつかり、悩み、迷ったこともあったかもしれません。しかし、その一つひとつの出来事が、皆さんを大きく成長させ、今日、この場所に立つ皆さんを形作ってきたのです。そして、これから皆さんは、新しい道を歩み始めます。高校生活という一つの節目を終え、それぞれの未来へと進んでいくのです。その道の先には、期待と希望が広がる一方で、不安や戸惑いを感じることもあるかもしれません。 どのような道を選ぶにせよ、重要なのは、考え続けること、そして自分の意思で一歩を踏み出すことです。未来は、待っているだけでは決して開かれません。自ら問いをもち、その問いに向き合いながら、進んでいくことが大切です。 もちろん、一歩踏み出せば、すべてが順風満帆に進むわけではありません。思い通りにいかないこともあります。失敗し、挫折し、立ち止まり、途方に暮れてしまうこともあるでしょう。しかし、その時こそ、自分と向き合う大切な機会です。なぜうまくいかなかったのか、どうすれば前に進めるのか。その答えを見つけることこそが、皆さんをさらに成長させてくれるのです。 もし、どうしても答えが見つからないときは、一人で悩まず、周囲の人に相談してください。 皆さんの周りには、家族や友人、先生、人生の先輩たちがいます。人に頼ることは決して弱さではありません。それは、より良い未来へと進むための大切な力なのです。自分を孤立させず、人と関わりながら歩んでいくこと——これは、時代がどれだけ変わろうとも、決して変わることのない大切なことだと思います。
今、私たちが生きるこの時代は、急激な変化の渦中にあります。技術の進歩は加速し、世の中の流れはめまぐるしく移り変わります。AIやデジタル技術が発展し、私たちはより速く、より効率的に物事を進めることを求められています。けれども、そんな時代だからこそ「本当に大切なもの」 が何かを、もう一度見つめ直す必要があるのではないでしょうか。 最近、「昭和」という言葉をよく耳にしませんか?令和7年が昭和100年にあたるということもあるかもしれませんが、なぜ現代に比べて不便な「昭和」という時代が再び注目されているのでしょうか?便利さやスピードを追求する今だからこそ、昭和の時代にあった、人と人との温かいつながりや、時間をかけて何かを積み上げる価値が見直されているのです。結局、どれだけ時代が進化しても、「人の本質は変わらない」 ということです。人と直接向き合うこと、時間をかけて何かを築き上げること、試行錯誤しながら前へ進むこと、こうした営みこそが人生を豊かにし、自分自身を成長させるのではないでしょうか。
加えて、私は少し前に読んだ本の中で、こんな問いに出会いました。 「あなたのこれまでの人生で最も後悔したことは何か?」 この問いに、私は「もっと勉強すれば良かった」「あの時こうすれば良かった」など、あれもこれもと考えてしまい、一つに絞ることができませんでした。皆さんはどうでしょうか? その本の著者の答えは、「人に優しくなれなかったこと」 でした。とても深い答えです。考えさせられます。 どんなに知識や技術を身に付けても、どんなに成功を収めても、最後に人を動かすのは、「人としての在り方」です。皆さんには、どんなに時代が変わっても、どんなにスピードが求められても、「人に優しくあること」 を忘れずにいてほしいのです。
さあ、明日からは新たな生活が始まります。皆さんの目の前には、まだ白紙の未来が広がっています。その未来にどんな絵を描くのか、どんな色を重ねていくのか、それは皆さん自身が決めることです。私たちは皆さん一人ひとりがどんな絵を描いていくのかが楽しみです。どんな絵を描いたとしても、そこには、新たな出会いがあり、新たな学びがあり、新たな挑戦が待っています。どうか、自分を信じて、自分らしい一枚を完成させてください。
最後になりますが、皆さんのこれからの人生が実り豊かなものとなることを祈念して私からのお祝いの言葉といたします。
2025年3月1日 高校校長 土屋 博文