この冬の寒さはとても厳しく春は来るのだろうかと思うような冬でした。先週あたりから校庭の梅の花がつぼみを膨らませ、咲きはじめました。春は確実に近くまでやってきています。

 この良き日に、夙川高等学校中高一貫1期生の皆さん、そして高等学校4期生の皆さん。ご卒業、おめでとうございます。記念すべき1期生の皆さん。皆さんが作ってきてくださった夙川中高一貫の第一歩、これに心から感謝をいたします。記念すべき1期生です。

 長いようであっという間に過ぎっていった6年間、3年間だったと思います。皆さん中高時代を通して、学びの楽しさを知り、多様な文化と触れ合い、自己管理のスキルを磨いていらっしゃいました。コロナ禍ではリモートの学びを実践され、とにかくなんでもやってみること、その面白さを経験されてきました。ひたむきに努力を積み重ねていらっしゃた皆さんの姿を私はいつも眩しく見ていました。

 卒業生の皆さんは、これから幾度となく、人生の分岐点に遭遇されることと思います。右の道を行くか、左の道を行くか、それともどちらの道でもない、また別の道を行くのか、行かないのか、という選択をする局面に立たされることになると思います。皆さんがどういう道を行くのかを決めることは、すなわち、皆さんがどう生きるのかという選択だと思います。皆さんが将来において、なにを求めるのか。それが選択の基準になると思います。経済的な豊かさを求めるのでしょうか。やりがいを求めるのでしょうか。家族や人との関係性を求めるのでしょうか。それとも名声・名誉を求められるのでしょうか。それとも、自分の心の声に従い、自らの信念を貫く道を求められるのでしょうか。

 その時に、他の人の意見に流されることなく、自分で考えて決めていただきたいと思います。人生の選択は人ぞれぞれの価値観や、人生観に基づいてなされるものだと思います。正解はありません。

 私自身も、今までの人生の分岐点で、幾度となく、どの道を行くかについて悩んできました。といっても、私の人生の大半が、選択の余地のない人生だったように思いますが、自分で選ぶことができたときは、大半において「面白そうな道」を選んできました。理由は単純です。死ぬときに「面白い人生だったな」と笑いながら死んでいきたいからです。その点においては、私は上手くいきそうな気がしています。辛いときや悲しいときや頭がおかしくなってしまいそうなときもありましたけど、振り返ってみるとどの経験も面白く、なかなかできないなと、思うようなことばかりでした。今はそのように思えるようになりました。皆さん、どんな経験であったとしても、無駄な経験というのは一つもありません。それらの全てがあとになれば、皆さんの糧になっているということを覚えておいてください。

 最後に皆さんに申し上げたいことは、これからの人生において悔いのない選択をしていただきたいということです。悔いのない選択とは自分の頭で考えて、自分で決める選択です。ですので、たとえ失敗しても、自分で決めたことだから後悔はないと思える、そのような人生を歩んでほしいと思います。

 皆さんのこれからの人生が、実り多く、素晴らしいものとなることを確信しています。どうか体に気を付けて、前向いて颯爽と進んでいってください。卒業おめでとう。

2025年3月1日 理事長 西 泰子