須磨学園夙川中学校4期生の皆さんご卒業おめでとう。

 この中高一貫校の卒業式というのは独特な趣があります。皆さんは中学校を卒業されますけれども、別れではありません。では、この卒業式は何のために今日行っているのでしょうか。今日の日は何の日かということについて、私の考えていることをお話ししたいと思います。

 まず、一つ目。今日の日は区切りの日です。何の区切りか。皆さんの義務教育は終わりました。保護者の皆さんが、皆さんに教育を授ける機会を与えるという義務が終わりました。皆さんはもう義務的に学校に行く必要はなくなりました。これからの学びは、「皆さんが学びたいから学ぶ」学びになります。それを覚えておいてください。

 二つ目。これは私からの意見です。皆さん、大人になりましょう。大人になれと急に言われても困ると思います。大人というのは、どういう人のことを言うと思いますか。思い浮かべてください。皆さんが「ああ、この人は大人だな」と思う人を。年齢的には歳をとっている人が、一般的に大人と呼ばれます。私が申し上げたいのは体だけではなく、内面も大人になっていただきたいということです。大人になる準備をしていきましょう。では、どういう人が大人なのか。自分のことは自分でできること、自立した生活を、自己管理がきちんとできること。皆さん、大人というのは我慢することを知っている人だと私は思います。そして相手の立場に立って物事を考えることができる人だと思います。

 そして三つ目。責任をもって行動できる人のことを大人と言います。皆さん、考えてみてください。自分の心の赴くままにいろいろなことをやってきた。そしてそれが許されてきた小学校時代。お勉強だけしていれば、お父さんお母さんから「頑張ってるね、良かったね、偉いね」と言っていただいていたと思います。中学校に入って、ある程度自分のことが、自分でできるようになってきた。「偉いね」と褒めてもらえる。でも、そんなことは当たり前のことです。大人にとっては当たり前のことです。皆さん、そのことはできるようになったと思います。

 では、これからは何が必要か。皆さん今14歳、15歳ですね。18歳になると、皆さんは成人と呼ばれます。あと3年しかありません。この3年間の間に皆さんがどれだけ社会で一人前と言われる人に近づくことができるか、その3年間です。強く強く申し上げたいことは、学力だけではないということです。学力はお勉強すれば、お勉強の時間を取れば、黙々と一生懸命積み上げればできるようになるわけです。全く問題ありません。でも、皆さんに必要なことは、学力だけではないということです。相手の立場に立って物事を考えること、自分のことを自分でできるようになること。

 これは当たり前だから、もうあまり言わなくてもいいと思いますけれども、人の痛みをわかる人になること、困っている人を助けることができる人になること、人に喜んでもらえることができるようになる。そこまでいくと立派な人です。立派な大人だと思います。わがままを言わない。これも大事なことです。今、皆さんは学校に来て、昔ほどわがままを言ってないかもしれませんけれども、家に帰ると、もしかしたらお父さんやお母さんに言いたい放題、やりたい放題やっているんじゃないですか。そういう人がいるとしたら、義務教育を終わっても、まだご両親のお世話になっていくはずです。今日のこの区切りの日に、ご両親や保護者の方、周りの人たちに感謝の言葉を伝えること、それをやってみてください。そして大切なことは自らを振り返ることです。感情の赴くままではなく、自らを振り返って自分自身が何が足りなかったのか、何が間違っていたのか、何をサボってきたのか、何ができていなかったのか。いろいろ反省をしてみてください。すぐにできなくてもいいのです、これからはそのことに気が付いて、一つずつやっていけばいいだけです。私のような年齢になっても全然できていないことが山のようにあります。でも、反省をすることというのはまだ続けています。

 できていなかったこと、これからやらねばならないこと、やっていこうと思っていること。そういったことを振り返りながら考えて、自分で決めていくという作業。これができるようになることが大人に近づいていくことだと思っています。今、いろいろなことを申しましたけれども、皆さんの中で順番をつけてみてください。自分は何からやっていこうか。今日帰ってしっかりと考えてみていただきたいと思います。学力以外のことについて言っています。人との関係を大事にしていくのか、人の立場に立って物事が考えられる人の痛みがわかる人になっていくのか、それともお父さんやお母さんの役に立つ人間になるのか、お友達が悩んでいた時に力を与えることができる、言葉をかけることができる人間になるのか。自分以外の人のために何ができるのか、そういったことも合わせて今日は区切りの日ですので、これから自分がどのように生きていくのか、どうか考えてください。

 答えはすぐに出ません。4月の入学式までにどんな高校生活を送ろうかしっかりと考えて、また学校にやってきてください。この3年間、皆さん本当に頑張られました。いろいろなことを学ばれました。知識だけではないものもいっぱい学ばれて、いろんな経験をされました。そのことをベースに、これからも悔いなき時間を過ごしていっていただきたいと思います。これから皆さんがますます、前を向いて颯爽と走っていらっしゃる姿を応援していきたいと思っています。

 今日は中学校の卒業。本当におめでとう、そしてこれからもよろしくお願いします。

2025年3月15日 中学校校長 西 泰子